通常、一本釣りに使用されるカツオバリは、漁業用のハリなので、一般的な釣具店で見かけることはまれです。
制作者も一本釣りを覚えた数年は、こちらの方が掛かりがよいだろうとヒラマサバリなどを使っていましたが、現在はカツオバリの利点が自分なりに判明し、今では一本釣りにはなるべくカツオバリを使っています。
ここでは三つの点から、カツオバリと一般的なハリの違いを挙げてみましょう。
@チモトの形が違う。
一般的なハリは、チモトが丸い「耳」と呼ばれるものですが、カツオバリはチモトが四角く、左右に突き出た「撞木」と呼ばれる形状をしています。
このようなチモトのハリは、平均して20号以上という、より太いハリスを結ぶのに適しているようです。
A返し(戻り)が小さい。
カツオバリも当然、餌落ちやバラし防止に、返しがあるものが乗合船では使われます。(職漁では返しのないカツオバリも使われます)
しかし、この返しは、一般的なハリよりもかなり小さめです。
その結果、トラウト用のマイクロバーブや渓流・磯の半スレバリと同様、よりスムーズに掛かると考えられますが、それと同時に、魚をハリから外しやすくなります。この時に大きすぎる返しは逆に手返しが遅れる恐れがあります。
B針先からフトコロまで、ほぼ直線。
タタキのバケと同様、カツオバリは針先からフトコロまでの間に、曲がり(シワリ)が殆どありません。そのため、実釣時には針先がやや外向きになります。
私は当初、「これではバラし易い」と考え、太軸のヒラマサバリなどを結びましたが、実際に魚が食い出すと、いかに素早くハリを外し、次の餌を掛けるかというとき、シワリのあるヒラマサバリは、スッと外れてくれないことも起こりえます。
水中で長時間やり取りするフカセでも、カツオバリを使って成果を上げる人がいるくらいなので、一本釣りでは優れたカツオバリを活用した方が数を伸ばすことができます。
カツオ用のハリは、銀色のハリが多用されています。
活イワシを使う釣りなので、オキアミを餌にする釣りと違い、餌を目立たせるための金色は必要か製作者は疑問に考えています。
個人的な好みで、フカセでは黒か銀色の、なるべく地味なハリを心がけていますが、これは多分に心理的なものかもしれません。なぜならば、佐島のカツオ漁師さんが、餌掛け一本釣り用に金色のハリを買い込んでいるのを見たり、でかいキハダが金色のハリで釣られたのを見たこともあるからです。
そうは言っても、私はかつて、銀色のハリにマイワシを掛けて一本釣りをしていたら、でかいカツオが突進してきたものの、餌の直前でUターンして帰ったのを見たことがあるので、私は「魚はハリの色を、気にする場合もある」と考えています。
本職の漁師さんと違い、年に数回、多くても10回未満しか沖に出られないという立場から考えると、魚を確実に仕留めるなら、目立たないハリで欺くのが一番無難ではないでしょうか?
以下の考察は、あくまでもフカセ釣りでの考え方です。
私はかつて、チモトの丸いハリでないと、魚がハリスを結ぶ管を見破るのではないかと考えていたことがあります。
しかし、フィッシングショーで大手ハリメーカーの方から、「管付きでも食いが変わらないよ」と言われ、かつて奥山氏らと同行した際、管付きのハリをフカセに使用し、チモトの丸いハリと何ら変わらぬ釣果を得て以来、フカセには管付きバリを多用しています。
本来はルアーマンがフカセに切り替えるとき、結びやすい管付きがいいという発想だったそうですが、太ハリスでもすっぽ抜けの恐れがないうえ、実際に一刻一秒を争うときは、素早くユニノットなどでも結べる管付きバリは、チモトの丸いハリよりも明らかに有利です。
そして、もう一つのメリットは「結び目が安定する」ということです。
カンパチやモロコ(クエ)の泳がせ釣りなどでは、管付きの泳がせバリを坂本結びや南方延縄結びで結ぶことが多いですが(ちなみに、マグロ延縄では延縄バリをスリーブで止めます)、これらと同様、管付きバリの管にハリスを通してから、本結びや外掛け結びなどで結ぶと、明らかにチモトの丸いハリよりも、回転する恐れがないため、安定性は上です。
(特に本結びがすぐれています)
ただ、管付きバリは、チモトの丸いハリより、どうしても目方が1割ほど重くなります。特に小さな餌を使うなら、チモトの丸いハリも忘れずに用意しておきたいものです。
深田家ではかつて、シマアジバリの様な、丸形でも針先だけネムリが入ったハリがフカセでは使われていました。このようにネムリの入っているハリは、英名を「サークルフック」と呼び、アメリカのツナ・トリップではこのサークルフック以外のハリを使うと、その遊漁船が営業停止になるという話があります。
また、マグロ延縄でも、海亀の混獲防止に、このネムリの入った延縄バリを使うように、ネムリバリは明らかに飲まれにくい特徴があります。そのため、ムツバリなどは歯の鋭いムツを釣るのには欠かせないだけでなく、最近相模湾でも威力を発揮するエビングでも、ネムリバリは多用されています。
制作者も実際、シマアジバリや深海バリなどを使い、口元に掛けることを試した年もありますが、確かにうまく口元に掛かれば、細いハリスでも歯で切られる心配がないので、安心してやり取りできます。
しかし、食いが悪い場合は、完全に飲み込んでくれないとしっかり掛からないネムリバリは、却ってマイナスになり、すっぽ抜けるか、掛かっても掛かりが浅く、途中でバラすことにつながります。
そのため、日に数回しかないかもしれないチャンスを確実にするなら、あえてネムリの入ったハリを使うより、一般的な丸形のハリで正確に掛ける方が無難でしょう。
20キロ級が多く、飲まれて切られることが頻発しているなら、ムツサークルフックなどが必要かもしれませんが……。
追記
2010年 初めて深田家で26キロのキハダを獲った時は、他の釣り人は全員、スーパームツのようなサークルフックで口元に掛け、20号程度のハリスでも釣果を上げていました。
大型魚と数十分引っ張りっこすることを考えると、唇に掛けない限り、ハリス切れを心配しながらのやり取りになります。
ただし、大型のハリが使える状況でない場合は、すっぽ抜けが多発することも事実なので、製作者はマイワシ餌なら、まずはタマン用、ブレイク続出ならムツサークルフックを投入します。
沖釣りでは真鯛、ワラサなどのビシ釣りの仕掛けで、ハリス切れ対策か、チモト部分を編み付けにしたものを見ることがあります。メジやカツオの場合は、まず「ハリスが太いので難しい」という理由からあまり編み付けはされていないようですが、もう少し考えてみましょう。
明治時代の資料では「根巻き」といってハリス数cmを編み付けした例や、現在でも見島沖などで行われているアオリイカ、ヤリイカを餌にした大型クロマグロを狙ったフカセ釣りでは、ハリスの一部を編み付けにしていますが、こと10kg以下のメジやキメジ、カツオには強度的に考えても不要でしょう。
それ以上の大型を狙う場合でも、製作者は「結び直すのに手間が掛かる」という理由や、魚が違和感を感じるのではと考えて編み付けを使うことはありませんが、どうしても気になるようなら、編み付けを使う価値は否定できません。(最近はザイロンノットが使われています)
なお、下田当たりで出船する千波崎(東伊豆沖と称されることが多い)辺りのクロマグロ・キハダ狙い(2010年は70sまで出ています!)では、ハリスに1mくらい強化チューブを通しても、平気で食ってくると聞いたことがありますが、魚がスレたら使えなくなってしまうでしょう。
延縄ではスリーブ止めする場合が多いですが、職漁の延縄はサンマやムロアジ、サバ、スルメイカなどの大型デッドベイトを使うので、その相関関係でごまかせるのではないでしょうか?
ルアーの場合でも、リーダーに編みつけを施す例が見られますが、製作者はその効果は未知数です。ルアーが丸呑みにされる可能性を考慮する人は50号や60号をリーダーの先に結ぶこともありますが……。
ビシ釣りのハリでも、カツオ、本メジ、10kg以内のキメジを主な対象魚として想定していた場合は、「ヒラマサ用のハリ」が一般的に使われていましたが、2008年〜の20kg超キハダの回遊、とりわけ2012年より「キハダをビシで釣る」という釣り方が定着してきましたが、この時に「飲まれてハリスが切れる」という事態が続出し、現時点では以下のような使い分けが考えられています。
1:サークルフックで飲まれてもカンヌキへ掛け、ハリス切れ防止。(ネムリ)
例:ムツサークルフック、キハダマグロ、最強鰹鮪針
2:サークルフックの「ネムリ」をやや押さえ、オキアミの刺し易さを重視。(中間型)
例:ジャイアンとキハダマグロ、最強キハダマグロ針、ウルワ鈎、
3:飲まれないよう合わせる、あるいは飲まれたらハリス切れ覚悟で使いやすさ重視。(ヒラマサ系)
例:メジ・ヒラマサ、メジ・カツオ、タマンスペシャル
耳付き:PEブリ・ワラサ、PEブリ・ヒラマサ、カット船ヒラマサ、カットヒラマサ、ヒラマサ・ブリ王、ふかせヒラマサ、プロヒラマサ
なお、カツオ・キメジ級の数釣りなら迷わず3番のヒラマサ系を推奨します。このサイズなら飲まれても「1本ならなんとかなります」。ただし、もしキメジやシイラに飲まれたらハリスの結び直しをしないと、次の当たりで切られます。
色合いについては、カモフラージュ効果を狙うならオキアミカラー、一般論では金色が推されていますが、銀でも黒でも、個々人の自信のある色が一番と考えています。
キャスティング用:ST-66が多用されている。サイズは2〜3/0前後までルアーの大きさによって使い分けるが、1より小さいフックはST-66を推奨。ライトタックルならST-56を使う人もいるが、堅い口のキハダは、ファインワイヤーでは一発で伸びる。
他にはトレブルSP-XH、Y-S82、Y-S22等。
ジグでも小型のジグをキャスティングで使う場合は、テールにトリプルフックを1本付けるのが無難。
なお、シングルフックをキャスティングで使用する場合、リングドクダコやインターフックGT、Pike-TypeRなど、GTやヒラマサキャスティングと同様のシングルフックが使われている。沈下系にアシストフックを使う場合、ジギングと同様、フロントに1本付けるケースが見られる。
ジギング用:各種のアシストフックを使用するが、50〜80g前後のジグならフロントに2本(製作者は段差を付ける)。
ジャコフック等、魚皮などデコレーションを使ったフックも小型魚にはよく使われているが、製作者自身はフックだけを使う。
(1本にするか、2本にするか、段差は付けるか付けないか、デコレーションはどうするか、早掛け重視か、乗せ重視か、細軸か、太軸か、一人一人意見、好みが別れる分野だが、各自が自分なりに「これがいい」と思えるフックセッティングを使うことに尽きる)
なお、100g以上の大型ジグなら、掛かり重視でフロント1本を推奨。