餌について


 

カツオ一本釣りでは、小魚を追っている群れを狙うため、活イワシがないと、仕事になりません。
 遊漁船の関係者なども「アミコマセやオキアミは、魚が毎日食べているイワシにはかなわない」と言います。イワシはさかなへんに「弱い」と書くほど脆弱な小魚ですが、その小魚は魚のみならず、海鳥から鯨類まで、あらゆる海の生き物を支えているのです。
 ここでは、そのイワシについて考察していきましょう。

 

 
餌に使われる種類。

・カタクチイワシ Engraulis japonicus
 小振りのカタクチイワシは、稚魚の時期からシラスとして利用されますが、鮮魚、煮干しなど加工品として広く利用されています。カツオ漁が活魚としての用途を産んでいる。三浦半島では春先は「イワシメバル」といって、カタクチイワシを餌にメバルを釣るのが風物詩になっています。
 「マル」(マルゴ)と呼び、カツオの餌にはこのカタクチイワシが主に使われる。



・マイワシ  Sardinops melanostictus         
 
 数年前、「イワシ不漁」と騒がれたマイワシだが、現在は米国からも輸入され、加工されている。大きさごとに中羽、大羽と呼び習わすが、沖釣りではカツオ・マグロの他、ヒラメ釣りの餌によく使われる。
 「ヒラ」(ヒラゴ)と呼び、大振りなマイワシはマグロ類を狙うのに多用される。

 なお、ウルメイワシは非常に弱く、生け簀に入れても数時間で死ぬので、通常は餌としては使えません。

 餌は定置網、巻き網で捕獲されますが、獲ったばかりの餌を「粗餌」(アラエサ)と呼び、生け簀でしばらく飼って慣らしたイワシを「慣れ餌」(ナレエサ)と呼びます。
 粗餌は安いですが、死にやすいため、扱いには注意が必要です。一方、慣れ餌は船の生け簀でも元気に泳ぎ、扱いやすいですが、その分値段は高いです。

 なお、慣れ餌はバケツ1杯で4,000円程度するということです。
(カツオ漁師は「餌を何杯積む」といいますが、これはバケツ単位で数えています)

 餌で釣り方を考えるなら、小さなカタクチイワシは一本釣りでないと使えないが、15cmあるようなカタクチイワシやマイワシは、一本釣りだと餌だけ取られる場合があるため、フカセ向きといえるだろう。

 「餌が元気よく泳げばカツオに化けるが、死ぬとシイラに化ける」と深田家のおかみさんは言っていたものです。
 イワシは非常に弱りやすいため、丁寧な扱いを心がけましょう。

 なお、混じりもの(アジ、サバ、カマスなど)が混じった餌は困りものですが、その原因は以下のように考えられます。

・アジがいると、「ぜいご」でイワシが傷つき、死んでしまう。

・サバの場合は、イワシそのものを食ってしまう。

・他の魚にしても、その分だけ酸素を消費する以上、感心できないものです。(ヒイラギもよく混じりますが、餌としての効果は期待できないでしょう)



 
イワシ以外の餌

・オキアミ(南極オキアミ)
Euphausia superba

 南極オキアミは植物プランクトンを主食にし、髭鯨やヒョウアザラシ、ペンギン等に捕食されるが、南氷洋の生態系で最も重要な種類、体長は6cmで寿命は最大6年(!)
 主ににビシ釣りで使われるが、付け餌にも多用される。
 オキアミが遊漁の餌として普及してから数十年が経過したが、養殖魚の餌や、加工食品としても馴染みが深い。
 コマセダイ、ワラサ、イサキなどのコマセにも欠かせないが、八里ヶ瀬沖ではクロマグロにさえ使われている。
 解凍されるに従い、酵素によって分解され、最後は黒ずんでくるため、暑い時期はクーラーボックスから小出しにして使うのが鉄則。カツオ・マグロ類といえど、オキアミに学習すると、活き餌を撒いても浮きが悪くなったり、ルアーの食いが悪くなるため、このような時はビシ釣りが威力を発揮する。
 付け餌として、マルキユーから発売された「特船オキアミ」は、ワームのように丈夫なので、本物のオキアミと抱き合わせるか、単体で使用しても十分に食ってくる。


キビナゴ Spratelloides gracilis

 西日本(九州、四国)に多いキビナゴは、食用としても非常に美味だが、寿命は1年半ほど、イカナゴとは別種で、こちらはスズキやメバルの餌として利用される。
 活き餌として使うことは殆どなく、冷凍物をパヤオで撒き餌・付け餌として使うことが多いため、(キビナゴをイミテーションしたフライも有名)パヤオのカツオ・マグロ類もキビナゴが撒かれることを学習している。
 

・ムロアジ Decapterus muroadsi

 くさやの原料としても有名なムロアジは、活き餌としてカンパチ、ヒラマサ狙いに欠かせないが、パヤオで使う場合は泳がせてもよいが、通常は冷凍物をぶつ切りにし、パラシュート釣りの餌として使う場合が多い。
 通常はマグロ狙いの餌である。


 
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