2012年 久米島遠征

私には夢があった。「久米島のパヤオで、でかいキハダを釣ってみたい」と……。 
(
阪奈ビルフィッシュクラブのHPを見てしまったことも、一因かも…)
 しかし、久米島の船は仕立て船なので、学生時代は志を共にする仲間は集まらず、伊豆諸島の堤防釣り程度に留まっていた。 
 一部の釣具店で久米島ツアーが開催されることも知っていたが、秋口の相模湾カツオ、メジシーズンと重なっていたため、パスしていた。
 社会人になってからは、時間の確保が難しかったため、沖縄本島が限界だった。
 しかし、思わぬところで機会が訪れた。




 昨年「大学の後輩の同期」として知り合い、長三郎丸のカツオビシ釣りに挑戦した日本魚類学会員の柏木氏、仲間の鈴木氏両名と、昨年末、貴雅丸で予想外の再会後、駿河湾のバラムツ釣りに同行させてもらい、スポーツフィッシングフェスティバルやフィッシングショーでも同行した。
 その柏木氏から「5月の連休、久米島に行きませんか?」と、声がかかったため、即座にOKした。

 柏木氏に飛行機、那覇→久米島間の船便(久米商船)ホテル、遊漁船(くに丸)の手配も引き受けて頂き、「総勢5人で、一人はフライで狙う」と聞いてさらに期待が弾む。
 私は「でかいのを釣るなら、絶対にパラシュートが効く」と分かっていたため「くに丸」に確認、相談の際「パラシュートもやりたい」と伝えるが、魚のサイズはキハダで30キロ、ビンチョウで20キロ、メバチは夜行性なので昼間は小さいものが食うという、カツオは23キロ級で、シイラ、沖サワラは日によってサイズが違うという。
 肝心のパラシュート一式は、キーパー等も含めて全て船に用意してあるため、心配は不要だという。
 ただし、パラシュートはオマツリ防止の観点から34人が限界で、電動を使わないと時間がかかって大変だと聞くが、他のメンバーと相談してから詳細は決めたい。
 ということで、各自が必要な道具類を買い漁り、荷物を送った挙句、52日の夜、仕事帰りに柏木、鈴木氏と合流し、羽田から那覇へ向かった。

 日付が変わり、2時近くに那覇へ到着したが、他の航空会社のお客もトラブルがあったらしく、空港のタクシー待ちでかなり待たされた。
 私は「風が強すぎでは?」と不安になるも、何とか国際通りに移動し、地元の釣り雑誌で情報収集するが、スピニングタックルで100キロ級のカジキが上がった記事があったり、パヤオで操業する各船の情報を見ても、いずれの船も「カジキが多い」と、とんでもないことが書いてあった。
 途中で地元のスーパーで、キハダやビンチョウが並んでいるのを確認し、泊港の河口部で二人はルアーで小手調べに入るが、「沖縄とはいえ、楽観はできない」と、私は観戦に徹する。
 結局、地元アングラーがサンマサイズのタチウオを上げたが、こちらは当たりがないまま(スカイフィッシュのような、トビウオの稚魚は見たが)、久米商船に乗船し、交替で休みながら久米島に向かった。
 途中で渡名喜島へ寄るが、実に海が綺麗で、島も美しく、久米島への期待が弾む。波間に数多くのトビウオが跳ね、ハテの浜やスーガマを目の当たりにし、船は兼城港へ入った。 

前日から久米島入りしていた柏木氏と同じ大学の仲間、フライフィッシャーの小西氏がレンタカーで出迎えてくれたが、彼はイトウのJGFA記録をクラスライン、クラスティペット部門両方で保持し、「スプラッシュ」に所属する凄腕アングラーだが、フライタックルの話をすると実に嬉しそう。

コンテナに預けた荷物が出てくるまで、しばらく時間を要し、いささか慌てたが、早速、釣り客御用達の「ホテルガーデンヒルズ」にチェックインし、荷物を置くと、夕方の船で最後のメンバーが来るため、それまで岸から釣ってみることになった。
 地元の店で弁当や餌のキビナゴを仕入れ、最初は漁港でやってみるが、誰にも当たりはなく、(小西氏は10番のフライタックル、後はシーバスやメバル、トラウトタックル)手の平以下のイスズミや硬貨サイズのオヤビッチャしか見えないので、隣の河口部に移動した。



 
 
こちらでは、鈴木氏がDコンタクトで20センチ程度のコトヒキをいきなりヒットさせて驚くが、私も河川内のシャローに7ディグリーを通すとヒットしたが即バラし、すかさず同じ箇所に打ち込むも、ヒット直後にバラし……。

 かくして、全員が河川内を攻めるが、私はもう一回バラしてはたまらんと、フックを研ぎ直す。
 しばらく探るうち、再び当たりがあり、そのまま引き続けるとフックに乗った!  やや重さを感じるが、素早く寄せて抜き上げたのは、先ほどと同サイズのコトヒキ。
 次は通称「水路」と呼ばれるポイントに移動し、風裏から探ろうとするが、くに丸の船長との打ち合わせも、最後のメンバーが到着する5時半に予定しているので、あまり時間はない。
 見るとダツの群れがいるので、キビナゴを撒くと予想通りに寄って食い始めた。  そこで柏木、鈴木氏両名はルアー、小西氏はフライ、私は餌で狙うと、ルアーにもしばしば反応し、私は当たったが餌を半分にされた。



 と、柏木氏にヒット!  水面でのたうつ魚体はダツではなくアオヤガラ! 慎重に岸へ寄せ、私がハンドランディングするが、メーター20もあって、なかなかの重さ。
 これで一度切り上げ、入港した兼城港に戻り、少し船溜まりを探し、くに丸の仲道邦夫船長に挨拶し、明日の戦略について相談する。船はかなり大型だ。
 その間にメンバー、野口氏が到着したが、彼は磯釣師でマグロは初めてだ。
 まずは船溜まりで「たか丸」の船長に場所を聞くと、さらに先の一番大きな船で、お孫さんらしき少年や、仲乗りさんらしき男性もいた。
 さて、船長との打ち合わせの結果、朝一は魚の活性が高いため
(浮く可能性もあり)、パヤオの近くでジギングをするが(メバチはイカを好むためか、パラシュートではあまり釣れないという)、メバチで20キロ級まで可能性があり、魚が浮けばフライでも狙える公算が高いとか。(昨日はしらせ丸、フカセででかいのを2本獲ったとか)
しかし、フライマンも実際にはフライに餌付けて釣ることが多いそうだが、ギア比1:1のフライリールでは、上げるまで2〜3時間はかかっていまうらしい。
 その後、パラシュートで大型を狙うが、手製の大型仕掛け巻きにセットされたパラシュート仕掛けを見せてもらうも、実に見事に作られている。ハリスは60号のナイロンで、ハリはスーパームツだ。
 なお、最初はフライやジグで釣るつもりで来たお客さんにも、釣ってもらうために、石を包んだパラシュートを使うと言うため、船の左舷一角には、石が山積みになったカゴが置いてあった。
 これで明日が楽しみ。
夕食も、地元の居酒屋で足てびちや久米島そば、海ぶどうなどを摘み、久米仙を飲むメンバーもいたが、やっぱり安い!




  4日

 翌日は7時出船なので、無理を言って朝食を早めに頂き、6時半にバッカンを持って行く。
 由奈丸やGAINAの船長に「クロマグロ狙いか?」と聞かれるが、「今回はキハダです」と苦笑い。(そんなに慣れているように見えた?)
 ちょうど船長も車で来たところなので挨拶し、左舷大ドモより荷物を積み込む。 

 ガーデンヒルズに引き返すなり着替えを済ませ、残りの道具類を積み込み、各自のロッドをロッドポストに差し込んで、竿の林となるも、7時ジャストに出船した。



 2時間ほど走ると、他船の姿が見え始めた。7番パヤオの周りには、この時点で8隻ほど船が来ていたため「ここは本当に久米島?」とあらぬ疑いを抱くが、その殆どは職漁船だ。
 船長は船室から出て、右舷大ドモの椅子に陣取った。見るとそこでコントローラーを使って操船している。
 まずはジギングで遊ぶため、パヤオを遠巻きにしている他船の隙間に船を入れ(小型魚狙いということで)、一気にパヤオに近づいた。
 すかさず私は舳先に立ち、CB-ONEのロングライド200gをいつでも投げられるようスタンバイ。
 
小西氏はチャミングのキビナゴを足元に置き、フライで挑むが後のメンバーはジギングだ。

「タナは70
 船が止まり、船長がそう叫んだ瞬間、私はジグを投げた。
 バリバスのマックスパワー(4号)に付いている(10m毎に色が変わる)カラーチャートを見ながら、90mまで落としてジギングを開始する。
 70mに差し掛かった瞬間、ガツン! とソルティガヒラマサ63Sに衝撃が伝わった。合わせを入れ、ポンピングを繰り返して浮かせにかかっていると、仲間のジギングロッドも次々に曲がっている。



 舳先から一段降りて抜き上げたのは、2キロ級のキメジだったが、次は3キロ超えのメバチ(ダルマ)、船長から聞いた通り、メバチが多いのが嬉しいが、メーター級のシイラが何本も足元に見える中、ジグが70mラインに到達する度にヒットする。空振りがまるでない。     

やや強い引きは5キロ級のキメジやダルマだが、ジギングの皆さん「パヤオでの小型魚入れ食い」初体験のためか、夢中になってジグをしゃくり、魚とやり取りを繰り返している。
 船長もその様子を楽しそうに見ているが、フライフィッシャーの小西氏はマグロが浮かせるべく、キビナゴのチャミングを繰り返す。
 私も小型魚狙いを楽しんではいるが、我を失うほどのめり込む恐れはないので、魚の処理の傍ら、エラと内臓の抜き方や、キハダとメバチの見分け方を教え、キビナゴをチャミングする。  
                                      
 キビナゴには初めて見るでかいシイラや、イナダくらいのツムブリが寄るが、キメジやダルマはなかなか浮かないので、シイラ狙いとなった。
 でかいシイラがヒットしたが、外れてしまったようだ。その次はツムブリ。



 磯釣り師の野口氏も5kg級のダルマに満足そうだが、さらにワラサくらいもあるいいツムブリを上げた。このサイズ見るのは初めてだぞ?!


 私も落とす度に当たっていたが、何か変だと思った瞬間、フッと軽くなってしまった。
「沖サワラにやられた!」
 巻き上げると20号のフロロカーボンがスッパリ切断されているが、昨年末は30号でも一瞬で切られたので、何ら驚くには及ばない。ただ、他の何人かもジグをやられたため、「キャスティングで仕留めて、島寿司(漬け寿司)にしてやろう」と、ドラドポッパーをぶん投げた。
 しかし、出てくるのはシイラばかり! 何回か外れてくれたが、ついにフックアップしてしまった。


                              

 ギンバルを使っているので、無理をせず寄せるが、一番でかいシイラが掛かっている! 魚がゆっくり泳いでいるのに乗じて、3分で1.6m級、16.5kgのシイラを寄せ、ギャフを打ち込んでしまった……。激しく暴れ回り、ルアーが掛かったままでは極めて危険なので、船長が締め具で頭を何度も突き刺して確実に締める。
(叩いても気絶するだけのようです、刺さないと即死しません)

その直後、オシアペンシルを投げた柏木氏も、1.5mはあるシイラを掛けたが、PE3号&60lbというシステムだったので、かなり走り回る。足下でも潜ろうと何度か旋回されたが、5分少々でこの大型シイラも上がった。
 次第にジグへの当たりが少なくなってきたので、船長に話を聞くと「魚が散ってしまった」と、いうことなので、ここでパラシュートで大物を狙うべく、パヤオから離れてみる。

 私は自前の両軸タックルを、船のキーパーにセットし、鈴木氏はタナが200mと深いこともあり、ミヤマエのでかい電動リールを借りる。
 船の仕掛けは、初めて見る「板にハリスを巻き付ける」というシステムだが、詳細はくに丸で直接確認願います。
 潮が動かないため、気長に待つしかないが、時折小雨がパラつく以外は、曇っているため暑さに悩むこともなく快適だ。
 小西氏はアベットのレバードラグに300gのジグを付けて、ディープジギングを試みるが(ライトタックルのカジキ狙いにも使える道具です!)、当たりはない。
 しばらく、キビナゴを房掛けにして狙っていたが、「ムロアジに変えよう」と船長が言った。ぶつ切りにするのかと思ったら、尾を切り落としただけで、ほぼ三分の二を使うようだ。ハリもかなり大きくする。(60号のハリスで坂本結びなので、素直に船長にお願いします)
 すると、鈴木氏に当たりが! 電動リールとはいえ、モーター音が唸りを上げる。非常に堅い竿がお辞儀をするので、確実に食っていると分かるが、これはバレた。
 巻き上げるときに大変だと見たのか、オモリを仕込んであるパラシュートから、ジギングロッドやフライロッドで使えるよう、石を使った(パラシュートが開いたあと、石は海底へ)パラシュートに切り替える。
 と、またもや鈴木氏が掛けた! ヒット直後は電動リールが音を立てても、ラインがあまり巻き取れないので、それと分かるが、ジギングには当たりが遠い。しかし、小西氏、野口氏両名はあくまでもジグにこだわり、しゃくり続ける。
 電動の竿は、一人が1本釣る度に交代することになっているが、魚は何sくらいあるか、期待が弾む。やがて、パラシュートまで巻き上げられたが、あとは20m(!)のハリスを手繰り寄せるだけだ。
「ビンチョウだな」
 船長はそう言ってハリスを苦もなく手繰り、
20kg手前くらいの魚が旋回しながら寄せられてきた。太陽の光を受け、魚体が輝いて見える。

 

  手鉤を打ち込まれ、船に引き上げられたのは20kg手前のビンチョウ! 活きている姿を見るのは初めてだが、背の斜めに光る、仄かな青さが印象的だ。カツオよりも細く、死ぬとすぐ消えてしまう。儚げな美しさ……。
(私はマグロ類に恋しているのか?!)
 初めてマグロ類を釣り上げた鈴木氏は、感動の記念撮影だが、次の電動パラシュートは柏木氏の番だ。
 ビンチョウの胃袋には、キビナゴ、ムロぶつ切りの他、小型のイカやシマガツオ類らしき小魚、甲殻類が入っていた。
 私の竿にも二回ほど当たるが乗らず、餌だけ取られてしまった。
「竿が軟らかすぎる」と、船長。
 確かに、パラシュートでは堅い竿の方がいい、と大将丸の船長も言っていたからなあ……。太軸のスーパームツだから、リーディングXゴウマンでは掛かりが悪いのか? 管付きムロアジやムロネムリに変えてもらうか?
 だが、石を使ったパラシュートは初めての経験だ。今度はしっかり合わせよう。これまで、パラシュートを振った後は「向こう合わせで掛かる」と思い、大艫の漁探を見に行っていたが、もはや竿から目が離せない。
 と、私の竿に波の上下動とは明らかに違う動きが伝わった。ゴゴンと持ち込んだ瞬間、大合わせをくれ、さらにロッドキーパーから竿を外して追い合わせをくれた。
「来たっ! これは20kg級だ」
 引きを楽しめるサイズだが、苦戦することはない。そう判断してポンピングを繰り返す。しばしば反転して走るが、食い止めるにはペン・インターナショナル16Sのストライクドラグ値で十分。(以前、「白身のせいか、他のマグロ類よりおとなしい」と聞いたことがある)
 初のスタンディングファイトを楽しむが、パラシュートの釣りも、タックルは許容範囲から自分の好みで揃えると楽しさ倍増です!
(特に、くに丸の船長はフカセよりもパラシュートにこだわっているよう)
 これまでに20kgを越えるマグロ類は7本上げているため、次第に慣れてきたのか、落ちついたやり取りでパラシュートまで巻き取った。60号のハリスも、確実に手繰れる。




 デッドサークルを描きながら寄ってきたのは初めてのビンチョウ! 柏木氏が正確に手鉤を頭に打ち込み、船に上げた。
 ビンチョウやりーっ! 私は日本国内のマグロ類をすべて釣るのが夢だったが、クロマグロ、キハダ、メバチまでは大小問わなければ達成していたが、ついにビンチョウも……。(コシナガは小型種で、狙って釣ることが国内では難しいので省略。イソマグロは属が違います)
 これも
20kg級だが、この騒ぎで鈴木氏は小西氏のアベットを借りてパラシュート再開!  
 そこに、野口氏がジギングで掛けた! 凄まじい勢いでラインが持って行かれるが、追い合わせをくれたかどうかで外れた……。
 大きい魚なので、「ドラグを押さえて思い切りフッキング」しなかったことがバラしの原因に違いない。小型魚なら口が軟らかいから向こう合わせ状態でもフッキングするが……。
 船長も「竿が折れるくらい合わせないと外れるぞ」と……。
 潮が流れ出し、魚も食い気が立ってきたようなので、今が次を狙うチャンスだ。下手にジグを落とすより、パラシュートでムロを流す方が食いはいいはずだ。

 次の当たりは鈴木氏、2本目か! 
 スタンディングファイトを繰り返すが、かなり苦戦していたよう。シングルスピードなので、一度に巻ける距離も限られているが、ついにパラシュートまで巻き取った。
 船長も「これはキハダか?」と、緊張してハリスを握るが、その瞬間に拍子抜け「こりゃビンチョウだ」
 初のマグロスタンディングファイトだけに、疲れていたんでしょうね……。
 たちまちハリスが手繰られ、手鉤を打ち込まれたビンチョウは、すべて私がエラと内臓を取り除くが、肛門付近に切れ目を入れるとき「ブシュッ」と、ガスが出るのが興味深い。ビンチョウは「オナラするマグロ」か?!

                                                                                  


 この個体は、トビイカの子と思われるイカを捕食していた。

                                                  



 次は電動のドラグ音が響き、柏木氏の仕掛けに同サイズのビンチョウが食ってきた。 ルアーマンの柏木氏もやっと釣った「マグロらしいサイズ」に破顔の嬉しさ。
 彼は今年の超早春、和歌山沖のビンチョウに行きたかったと話していただけに、嬉しさも倍増では?!
 魚の活性が高いときは「上で食うときは、下でも食う」なんて聞いていたが、朝はまるきり見えなかった鳥が現れ、シイラが跳ねたと思ったら、キハダも大きな水飛沫を上げている! 大艫近くで跳ねているので、キャスティングできるスペースはないぞ?!(沖縄の船は、艫に日よけの屋根が装備)
 野口氏が電動パラシュートに入ると、小西氏はキハダ狙いで舳からキャストを繰り返すが、シイラはアタックするものの、肝心のキハダは出ない。
 T2でも、ローデッドでも、ガンマでも……。シイラだらけ!
 先ほど、「掛かったシイラを、もっとでかいシイラが追ってくる」ということで、柏木氏にルアーを投げてもらい、掛かったシイラに追尾する魚体へフライを打ち込んでもらったが食わず……。
 私も大枚はたいてキャスティングタックルを持ってきただけあって、もどかしいが、今はパラシュートでビンチョウを狙うことが最優先だ。向こう合わせは期待できない。




 と、次の当たりは又もや鈴木氏! 舳近くの私が一番浅ダナ、胴の間が中間、艫が深ダナだったが、タナもよかったのか?
 こうなると止まらない。
 かくして、彼は
3本目のビンチョウをキャッチしたところで本日は終了……。
 柏木氏と私の仕掛けを回収していると、海面近くで軽く引っ張られるので「シイラでも食ったか?」とハリスを手繰ると、2kg弱のキメジ! まさかこれ以上稚魚を殺すわけにはいかないので、直接魚体に手を触れぬよう、締め具をハリに引っかけ、海面でハリを外し、お引き取り願いました。
 5時くらいまで操業したため、発送時間には間に合いそうにもないため、魚を船の魚槽で保管し、明日の帰港後に送ることとなった。
 その結果、5日は朝6時出船となった。パヤオの遊漁開始時間が8時からなので、その時間に出船するのがちょうどよい。

 港近くの居酒屋に、5kg弱のメバチを持ち込んで刺身を満喫したのだった……。(カスミアジの刺身もあったので頂きました。身はカンパチのような感覚ですが、味は淡いですね。)


 5

 早起きしようと肩肘張るまでもなく、小鳥の囀ずりと朝日で起こされ、てきぱきと動いて6時ちょうどに出船した。各自がたちまち船内思い思いの場所に散らばり、体力を養うべく横たわる。
 朝方は久米島とはいえ、半袖はやや冷えるため、長袖のターポンシャツとウェアを用意したが、今日は朝からべた凪ぎで、一眠り終えると、晴れて気温もどんどん上がってきたため、ウェアを脱いで腕捲りだ。
 キャスティングタックルにドラドペンシルとドラドポッパーを結び、ジギングタックルは「ラインシステムは組み直さなくても大丈夫」と判断し、グレートバリアスリムをセットする。
 朝食のパンを平らげ、ますます日差しが強くなってきたため、日焼け止めを顔と首筋、腕周りとあらゆる場所に塗りたくる。
(
仲間には、白人か歌舞伎役者のように見えたらしい……)
 今日は30分から1時間だけジギング、フライで小型魚と遊び、後は大物狙いの予定だ。
 7番パヤオの周りには、昨日よりは少ないものの、5隻ほどの船が見える。
職漁で出ているようですな。
 さて、本日もジギングスタートとなったが、私はCB-ONEの「VF9012ER STAND-UP TUNA」にソルティガ6500Hのキャスティングタックルを使いたいと思い、ドラドペンシルをぶん投げた。ロングロッドだけに、かなり飛距離が出る。


                                                  

 水面でドラドペンシルをアクションさせると、たちまち大型シイラが襲いかかった。特に合わせるつもりはないのに、フックアップしてしまい「時間と体力を無駄にできない。早く上げよう」と、少しドラグを締めて寄せにかかるが、このシイラ、えらく元気で何度も走る。
 ギンバルを使っているため負担は少ないが、ティップが柔らかいため、シイラには「逃げ切れる」と錯覚させたのかも……。
 寄ったと思ったら、ジギングのラインを巻き込みそうなので、ベールを返してしばらくしのぎ、後は一気に寄せてランディングとなったが、今回は10分近くかかって、おまけにかなり疲れたぞ?!
                                
                  

 ジギングでは時々当たるが、私にはヒットせず、小西氏は80cmくらいのシイラをフライで上げるが、キビナゴをチャミングしても、昨日より食いが悪い感じだ。
 野口氏、柏木氏、鈴木氏はポツリポツリと型を見ているが、私はジャークのリズムが悪いのか? レンジは大丈夫か? と、試行錯誤するも食わず。



 と、柏木氏は今回唯一のカツオをキャッチ! 1.5kgほどの小型カツオだが、5人がかりで2日釣っての1本だから、かなり貴重なカツオであることは確か。
 さらに、野口氏もまた掛けた! ラインが持って行かれた後、一時的にテンションが緩んだ。
「バレた?」
「上に上がってきているだけだ! ガンガン巻いて」


                                   
 すぐさま魚に追い付くと、やり取り再開となったが、私もてっきりダルマかキメジだと思ったら、浮いてきたのは沖サワラ! 彼は2本アシストフックを出していたが、それが今回は功を奏したようだ。水面まで来てもまだ走り回る。
「本サワラより遙かに引くよ」

 そうはいっても、80cm3.5kgほどの魚体なので、ジギングタックルで苦戦するほどでもない。間もなく、初日にジグを何本も持って行った沖サワラに手鉤が打ち込まれた。
「船長、これよりもっとでかいのもいます?」
「いるよ」
 沖サワラ(カマスサワラ)のでかいやつは、2m近く、3040kgにまでなった気がする……。



 しかし、その後はジグへも反応が悪くなってきたため、アミモンガラでも釣ってやろうと考えた私は、ジグの後ろにハリスとハリを結び、キビナゴを掛けて1枚をキャッチ。     
 だが、その後が続かず、ツムブリを2尾ばかり上げるも、モンガラの方はハリまで食い込まず……。果てはイスズミまで食ったが、即リリース! 途中でツナキャスティングタックルで同じ事をするが、投入する度にシイラがキビナゴを食いに来るので、慌てて引き上げるが、ついにメーター級が掛かってしまった! 強度はあるので寄せにかかるが、船縁で12号のハリスが切れた。

 食いが一段落してきたようなので、「でかいのを狙いましょう」と、少しパヤオを離れる。1時間以内の予定が、結局、1時間半もやってしまった……。
 クーラーからムロアジを取り出そうとすると、船長が手で制して「今日はキビナゴがいい」と、一言。ハリをサイズダウンする。
 舳側が浅ダナ、艫が深ダナに設定されているようなので、小西氏のアベットを舳側、私のペンを胴の間、レンタルのミヤマエが大艫(移動できません!)にセットする。
 魚探を見ると、二枚潮になっているが、今日は上の潮を狙うようだ、タナも大分浅くなっている。
 しかし、ちょうど潮が利いていない時間だ……。気長に狙うしかない。
 この7番パヤオでは、昨日に続いて、由奈丸、つね丸、京香丸、第三忠丸なども操業していたが、GAINAはスピニングタックルをキーパーに取り付けていた。やり取りは大丈夫でしょうか?
 さらに暑くなってきたので、思い切ってゴアテックスのパンツ部も脱ぐ。しぶきをかぶる訳でもないので、血を浴びても構うものか。蒸れたら逆に効率が悪い。日焼け止めを再び塗った。
 チャンスを待って淡々と流し続けるが、当たりを待つ間にパンをモグモグやり、暑いのでゼリーも頂く。アイスキャンディーでも買ってこれば良かったか?
 電動の仕掛けは野口氏の番だが、船長が道糸を手繰ってパラシュートを開き、その後も道糸を持って当たりを待っている。素人がやると指を持って行かれる恐れがあるが……。
 昨日など「今食うぞ」と、言った直後にビンチョウが食ったくらい的確な目を持つ船長だったが、この時は「反応は見えないけど……」と、こぼしていたらしい。

ピンッ 

 何の前触れもなく、船長の手から
PE30号が持って行かれた! 流石に船長も慌てるが、すぐに電動が唸りを上げて魚と引っ張り合いを開始する。
 どんどん持って行かれるというわけではないが、モーター音が聞こえても空回り(ドラグを調整しているため)したり、ズル、ズルッと引き出されたりしたが、頑丈極まりない道具なので、まず大丈夫だろう。
「そろそろ巻き上げましょうか?」
 ハリスを手繰るとき、オマツリになるのだけは避けたい。
                                                  

 と、アベットで狙っていた柏木氏の仕掛けにも食った! 私だけ蚊帳の外とは残念だが、更に急いで巻き上げる。パラシュートのハリスを板に巻き込むと、竿をキーパーから外して左舷に置いた。



 ダブルヒットは嬉しいが、電動で巻き上げたキハダは15kgほど、それでもビンチョウより引きは強く、「まあまあのサイズ」ということで一同の顔に笑みが浮かぶも「久米島のパラシュートで、このサイズはまだまだ小物」という意識が抜けない。
 良型は私が締め、エラと内臓除去を引き受けるが、野口氏とキハダのツーショットを撮っている間に、柏木氏の獲物も浮いてきた。



 こちらは10kgほどだが、並んで撮るとなかなか見栄えがする。このサイズがルアーやフライで釣れたらもっと面白いんだけどね。
 私も奮い立ち、パラシュートを激しく振るが、何と突然の高切れ!

「石を入れすぎだよ」と、船長は言う。それも一理あるが、沖サワラにでもやられたのでは?(ちょうど、白色の部分で切れた)
 いずれにせよ、PE8100m級の損失は痛いが、まだ400m近くある。まず大丈夫だろう。トローリング用スナップスイベルもなくなったので、延縄用クリップを借りる。(ハリスがえらく長いうえ、パラシュートにフスマやキビナゴを詰める際、場所によっては移動する必要があるので、すぐ接続できるスナップは欠かせませんね。
 石を入れるパラシュートは在庫が切れたため、オモリを使ったパラシュートで再開だ。船長が船室からパラシュート単体、延縄用サルカン、PEラインを使って新しいパラシュート仕掛けを作ってくれた。実にありがたい。
 だが、ここではパラシュートが開いても、しばらくは当たりを待つため、一流しごとのインターバルが長い。餌の使いすぎを防ぐという面からも参考になるが、長いハリスなので、横に流れていく時がアピール時間のようだ。
 船のラジオ放送が、正午を告げた直後だった。

 ギイイイー、ジィーーー!
 いきなり私のリールがクリック音を上げ、猛烈な勢いで
PEラインが引き出されていった。ついにビッグサイズが食った!
 リールは依然として悲鳴を上げ続ける。PE8号が一気に持って行かれたため、何メートル出たか分からない。

 穂先は海面スレスレまで曲がり込み、ラインの染料が海へ僅かに落ちた。
 これはでかい! 35kg以下ってことはないだろうが、数十mは走るため、その間はキーパーから竿を外せない。下手をすると事故の元だ。

 魚の走りが止まった。



 少しばかり巻き取った後、スタンディングファイトを開始するが、手前を向いているときはガンガン巻き取れるも、走ったときの重量感が半端でない。自己記録更新も夢ではない?
 相模湾よりも深いタナで食うため、「遠っ走りはしないが、潜る相手を浮かす」という持久戦なので、フルドラグは不可能だ。無理したら確実に人間がバテる。
 しかも、暖かい海域なので、その分元気がいいということも考えられるが、これまでに20kgを越えるマグロ類を8本獲っているため、その経験を活かしてポンピングを繰り返し、巻ける時は遠慮無く巻き取る。
 動画も撮ってもらったため、さらに悪ノリしてポンピング(ファイトは真剣です)するが、巻ける時は下手にポンピングすると逆効果なので、そのまま巻き取る。
 出来ることならスタンディングで上げたい。そう思ってやり取りを続けるが、ネムリバリが口元に掛かっているのは確実なので、ハリス切れの恐れはないが、弱ることもない。

 去年のクロマグロは何て楽な相手だったんだ!!
 筋トレも自分なりに行ってきたので「上半身ではなく、下半身を使ってポンピングするといいよ」なんて言いながらガンガン巻き取るが、さらにドラグを締めざるを得ないので(さもないと、いつまでも寄らない)、体に掛かる負担も半端ではない。
 下のウェアを脱いでおいてよかった……。


                              


 技術を尽くして戦うが、魚が次第に反転し始め、竿をガンガン叩いて潜ろうとする動きが伝わってきた。ヒットからまだ10分弱だが、さすがに体力的に無理があると判断し、私はここで、竿をキーパーに掛けてウインチファイトに切り替える。獲るためならこれしかない。
 ウインチファイトに変更し、ドラグが滑り気味と判断した私は、さらにレバードラグを締めるが、フルには締めない。
 使用ハリスはナイロン60号、メーカーサイドでは「適合ハリス30号まで」の竿だが、16lbクラスのトローリングリールなので、フルドラグでも10kg行くかどうかだから、竿先にPEが絡まない限り、折れる心配はない。
 しかし、あまり締めすぎるとPE8号が飛ばされかねないので、これ以上ドラグを締めず、巻き取り続ける。
 あと130mだが、魚の重みが次第に強まり、左手でPEを引き、右手でハンドルを回すのも難しくなってきたので、すぐさまローギアに切り替えてしのぐ。
 もはや穂先は海面に突っ込みっ放しだが、折れる恐れはなく、システムにも自信があるため、頭が上を向いたと思しきタイミングで巻き続ける。
 時折、「ハイギアに戻せるか?」と試してみるが、今や魚の抵抗は凄まじく、ローギアでも巻けないか、下手すると何度か持って行かれるくらいなので、ハイギアで巻くのは絶対無理だ。下手するとペンのリールが壊れるぞ……。
 左手の腕時計を、安全のため船室に置き、さらにラインカッター付きのライジャケも、万一のことがあってはならないと一時外す。
 余計な心配がなくなったことで、さらにやり取りを続けるが、浮かせるのがこんなに大変だとは! いくら慣れてきても、マグロはスタミナが違うね。
 何とか80m、70mと巻き上げるが、正午から大分時間が経っているにも係わらず、まだ魚は暴れ続け、一進一退を繰り返す。
 30m(ハリス分を足すと、50m)前後までやっとの思いで巻き取るが、快晴のため、光を嫌がってなかなか距離を詰められない。
 しかし、いくら激しいファイトでも(ウインチで言うへきではないが)「嫌になる」ということは決してない。素晴らしい引きを、自分の力だけで受け止めきれないのが残念だが、この素晴らしい獲物が嬉しくて仕方ない。
 何せ、ようやく「久米島サイズ」と呼べるキハダがヒットしたのだから! だんだん、私も余裕を取り戻し、ペットボトルの水を飲んだり、頭からかぶったり、果てはスプールやガイドにまでかけてトラブルを防止する。(この間も、日焼け止めを塗りたくった顔で決死の形相をしていたらしい……)
 PEの色が変わっていく度に「早くパラシュートが見えないか」と、期待するが、ついに最後の10mまで寄せ、海中にパラシュートが見えてきた! 
 さらに巻くと、遠くでキハダの銀影が光り、私は船長に取り込みをお願いする。何とかパラシュートまで寄せると、あとは竿をキーパーに戻し(ややドラグは緩めるも、フリー状態は厳禁! バックラッシュします)、船長が手袋をはめ、パラシュートをつかんだ。今から60号のハリスを手繰る。
50kgはない」ということだが、ハリスを手繰るうち、第二背ビレと尻ビレが伸びた、立派なキハダが寄せられてきた。45kgは確実だ!

「やったー、イエローフィン・アドベンチャーだ!」
 何度も旋回を繰り返す、見事なキハダがついに浮上した。60号なんて太すぎるのではと思ったが、このサイズを確実に獲るためなら納得できる。魚が回った時、パラシュートを巻き込みそうになったので、私が上に持ち上げてかわす。
 ついに船長が銛を頭に打ち込んだ!
「当たったあー!」
「やったね!」 
 一瞬で獲物の血が海面を染めるが、船長は上手く銛綱を手繰り、私が銛の柄を、元の場所に戻し、船長から託された銛綱を握る、その間に船長は板を外した。
「最後は自分で鉤掛けて」
 大喜びで手鉤をつかみ、頭に打ち込み、魚の「前に進むしかない勢い」を活かして船内に引きずり上げた。

 素早く船長が棍棒(野球のバットを短くしたような形)で、キハダの頭を叩く(スイカ割りのようないい音がしたが、頭蓋骨が割れたのか?)。
 さらに締め具を頭に打ち込み、絶命の瞬間、独特の輝きを見せて獲物はおとなしくなった。
「締めると色が変わるんです。ほら」(動画を撮っているので、解説風)
「あとは銛っ端外して記念撮影。――船長、ありがとうございました!」





 ようやくいい型のキハダが出て、船長も嬉しそうだが、魚を抱え、鈴木氏に写真を撮ってもらう。お次はみんなでキハダを囲んでの撮影だ。

 目方は47kg、自己記録更新も嬉しいが、ついに、高校時代から夢見てきた久米島キハダの夢が叶った……。

「その竿だとオモリがあった方がいい」
 と、船長は言った。
 
3年前、大将丸でパラシュートをやった時も、200号のオモリを使って向こう合わせになっていたため、「軟らかい竿なら、オモリがあった方が食い込みがよい」ということだろうか?
 と、今度は野口氏がジギングで掛けた! 凄まじい勢いでバイオマスターのドラグが滑るが、間もなくフックオフ……。

 慣れていないと、「追い合わせ」もうまく行かないよねえ……。
 3月にスポーツフィッシングフェスティバルで北村秀行氏に久米島の話を聞くと「一日に一回は(大型魚の)当たりがある」と言っていたが、本当だなあ。
 しかし、小型魚の数釣りではなく、ビッグサイズをジグで食わせるのはかなりの技術が必要なのは間違いない。
(船長の話だと、「ジグででかいのは食わせられないか、掛けても切られることが多い」とか)
 その直後、私のペン・インターナショナル16Sが再び悲鳴を上げた! またでかいのが食ったか? と、私はウインチファイトするつもりでいたが、明らかに先ほどより小さいと分かり、スタンディングに切り替え、ガンガン巻いていく。
3年前も、21kg釣った直後にまた食ったけど、それは15kgだった」

                                                
 なんて言いながら余裕全開で寄せ、あっさり手鉤を打ち込まれたのは、10kg程度。相模湾ならこれでも嬉しいサイズだが、もはや「メジ扱い」でしかない!
(もっとも、10kg級は「マグロ類」として意識するには最適なサイズだと思うのですが)



 
 
その次はトップを投げた野口氏にでかいシイラが食った! 船に上げられたのは、1.5mはあるデコっぱちのシイラだが、本人が高身長なので小さく見えてしまう。
 この時間帯は、潮が動き出したらしく、他船も魚を上げているが、キハダの胃袋からはいずれもキビナゴがどっさり出てきた。他の餌はあまり捕食していないようだ。
(昨日、鈴木氏が釣ったビンチョウは、パラシュートで撒いたムロアジの尻尾も捕食していたが)

 その潮の動きは、さらなる魚を呼んだ。

 アベットが悲鳴を上げ、柏木氏がスタンディングファイトを開始した。私のギンバルをセットし、ポンピングを続けてもらうが、いい引きを見せるものの、釣り人を圧倒するほどの力ではない。

 そうはいっても、昨日のビンチョウより強いのは間違いない。ルアーマンの彼も、状況によっては餌釣りで楽しむことを知っているため、マグロ類の引きを満喫しているようだ。
 やがて、浮いてきたキハダは15kg程度だろうか。
 そこで魚が反転し、一気に潜った!
「こんな事があるから、油断すると竿が持って行かれる」と、船長。
「ヒラマサのカモシ釣りでも同じ事があるけど、あれは一度繰り出してやれば弱るっていうが、キハダは強いでしょう」 


 
 二度目の寄せで、無事に船へ上げた。 

 しかし、久米島のパヤオの釣れ具合はこれで止まらなかった。

 鈴木氏が借りていた、船のティアグラが悲鳴を上げた。レバードラグが滑り、一気にPE30号が持って行かれる。
「こりゃ、間違いなく30kg以上あるぞ!」
 しばし、ファーストランを交わした後、船長がギンバルを持ってきた。
「ピンがないけど、これを着けてやって」



 
 
竿の落下防止の、尻手ロープもあるが、少し前に移動してスタンディングファイトを開始した。彼にとっても大型マグロは初めてだが、このタックルなら心配ない。
 アルファタックルの剛竿が根本から曲がり、ティアグラのドラグが滑るが、彼も果敢にポンピングを開始する。ただし、リールが重いうえ、メタルバット部が長いので、扱いに慣れるまでが大変だろう。
 船長の話だと「いろんなリールを使ってきたけど、ティアグラが一番」ということです。(既に10年使っているとか!)
 私は仕掛けを巻き上げ、鈴木氏のファイトを見守るが、彼もビワコオオナマズやシイラ、バラムツを経験しているだけあって、決して弱音を吐かずにやり取りを続けた。さすがにタックルが重い上、引きが強いため、ウインチファイトに切り替えたが。
 ドラグはかなり強めに設定していたらしく、私の時ほど「浮かせるのに苦労」したようには見えなかったが、後で話を聞いたら、「肩と腕だけでなく、踏ん張っていたので膝にもかなり負担が来た」とか……。
 本日2本目のグッドサイズと言うことで、期待しながらやり取りを続けた。彼にとって忘れられない「First BigTuna」だろう。
 ついにパラシュートまで巻き取り、船長がハリスを手繰る。「さっきより少しだけ小さい」
 そうはいっても、茶褐色の背中を見せて、40kg級はあるグッドサイズのキハダが浮いてくるのだから興奮しないはずがない! (やり取り中、あまり弱っていなかったとか?!)
 このキハダは「頭を下に向けながら」寄せられてきたため、最後の最後まで逃走を試みるが(忠兵衛丸の船長曰く、「頭が上になって旋回するのがよい」)銛を打ち込もうとしても、尾ビレで水面を打っても、まだ潜ろうとする。
「もう一回、最低でもあと1回は回さないと無理」
「あー、まだだ。しぶとい」

 船長が最後の詰めに入るべく、ハリスを一気に手繰るが、それでも尾で海面を叩き、最後まで遁走を試みるべく、船底に向かって旋回する。
 しかし、そこでキハダも力尽きた。頭が海面に出て、船長の銛が後頭部に打ち込まれた!
「入ったー」
 鈴木氏が手鉤を持つが、一発目は鰓蓋に掛けたので、キハダの目方に耐えられずに身切れを起こし始めた。二発目で下顎に入り、少し裂けるも、船内に引きずりあげた!



 船長が締め具でキハダを締めると、鈴木氏、念願の大型キハダを抱きしめて記念撮影!
 おめでとう!
(釣った本人も、呆気にとられているようだが、これが久米島なのだ)

 このキハダの胃袋も、「キビナゴだらけ」のうえ、浅いときは100m少々のタナ(場合によっては80mと、ビンチョウの時よりかなり浅い)で当たりが集中しているので「レンジに入れば可能性がある」と見た私は、やはり3年前の本島を思い出し、77gのスキルジグを結んだ。メインラインは4号だが、時間さえかければ届く。
「もう一本釣ったら、誰かこの竿でパラシュートやらない?」と、私も聞いてみるが、小西氏と野口氏は、あくまでゲームフィッシングにこだわり、ジギングを続ける。
 私も「しゃあないか」と、ジギングロッドを左舷に置き、パラシュートを続けるが、間もなく「もう一本」が食ってきた! 
 リールのクリック音が響き、又もやPE8号が持って行かれるが、さっきほど激しくはない。これならスタンディングで上げられるか? 
 広い舳近くまで移動し、「下半身運動」でポンピングを繰り返すが、だんだんきつくなり、最後は「ほぼ座ったまま」のやり取りになる!


 「体重を後ろ向きに乗せて、負担を掛ける」というやり方も分かったが、下手をして高切れしてはたまらない。
 思う存分やり取りした後は、やはりウインチファイトとなった……。
 だが、今回は「左手でラインを引き、右手で巻き込む」のみならず、キーパーに固定した状態でもなお、ポンピングを行った。キーパーに掛けたままよりも明らかに魚の寄りが早い。
 そんな時に限って、キハダのボイルが舳先方面で出るのだから心臓に悪い! 小西氏に投げてもらえばよかったか? (ただし、もしヒットしたらオマツリによるラインブレークの危険もあるが)
 今回は35分ほどかかったが、何とかパラシュートまで巻き取る。竿先を艫方面へ向け、船長がパラシュート下を掴んだ。ハリスを手繰りにかかる。
 手繰ったハリスを海に入れながら、魚の大きさはさっきと同サイズ、45kgだ! 船長の銛がスムーズに入り、小西氏が手鉤を頭に打ち込んで魚を船に上げた。


良型2本キャッチとはやり過ぎ! やはりオモリ付きのパラシュートが手放せませんね。
 次第に「大型魚不感症」に近づいているのだろうか……。(やがて、100kg以下には満足できなくなったりして……)

その後は2回ほど流し、沖上がりとなった。

2日間で、どれだけ釣れるか不安も残ったが、ジギングでは小型魚中心ながら全員満足でき、キャスティングとフライは不調だったものの、パラシュートで良型のビンチョウ5本、キハダ3本を釣れたのだから、さすがくに丸である。

 少し昼寝した。



 美しすぎる久米島の風景を見ながら、船を港に着ける。
 タックル、道具一式を船から上げ、水道水で洗うが、他の船も良型のキハダを5本獲っていた。このサイズが日常ってのも素晴らしい。



二日分の釣果を魚槽から取り出し、(私が手鉤を中に落としたりしたが)ビンチョウ、キハダ、シイラ、キメジなどを並べ、記念撮影だ。(回遊魚の大量虐殺か?!――それも事実だが、大勝利だ!)

運送の人が来ているが、「丸ごと送るのは、送料がかかる」と判断し、築地で買ってきたグリーンバーチを広げ、仲間に「切ったのはこれで包んでから箱に入れて」と、頼み、船の大きなまな板を借りた。
 まずは5本のビンチョウを「ドレス(ヘッドレスの略)」にすべく、尾鰭、胸鰭を切り落とし、頭もカマだけ残して落とす。胸鰭だけは鎌形のノコギリで切り落とすが、あとは船長の包丁だ。歯が薄めだが、マチェット(蛮刀)も真っ青の切れ具合で、どんどん切れる!
 こんなに多数のマグロ類を裁くのは、水産会社にいたとき以来かもしれないが「発送の都合上、あまりゆっくりはできない」という事情と、「休んでいたら、さらに疲れが出る」とでも思ったのか、これまでになくアドレナリンが分泌されたらしい。
 その間に、船長もダルマやキメジの頭を落としてくれたが、頭や中骨は大きなプラスチックのアラ箱だ。捨てるには余りにもったいない。(シイラやツムブリも、船長の知り合いのおかずとなる)
 続いて、沖サワラの頭を切り落とし、運びやすいよう胴を半分に切る。これは旨いよ。

 鈴木氏のキハダも何とか捌き、私も「でかい2本」と記念撮影し、捌き始めるが、時間がないと見て、船長がもう1本を捌いてくれた。私の3倍くらいの早さですぞ!
 と、いうことで帰港してから2時間近く時間を食ったが、全員が獲物を発送し、船長への支払いを済ませた後、ビンチョウのロイン1丁とキハダの中骨2本、そして胃袋を「宴会用」に持ち帰る。
 魚を捌いている間に、仲間が道具一式を洗い終えていたため、ガーデンヒルズに戻るとすぐさま洗濯機に洗い物を放り込み、初日に入った居酒屋に魚を持ち込む。

 獲物と健闘に乾杯! 料理もキハダ中落ちはタタキ、ビンチョウは刺身、そして胃袋は湯がいてもらったが(圧力鍋を使ったらしい)、いずれも美味!
「胃袋は食べなきゃもったいない」との意味を理解して貰えたようです。


 6

 翌朝は?
「早朝出船しないので、ゆっくり眠れる」といっても、やはり小鳥で起こされ、ゆっくり片付けしながら8時半に朝食を頂く。
 と、小西氏が「くに丸の船長から、『ライジャケの置き忘れがあったぞ』と、電話があったから取ってきた」と聞いて恐縮。
 捌くとき、邪魔になると考えて、パラシュートアンカーのカゴに入れたまま、すっかり忘れていたんだな……。

 最後の朝食は、グルクンのあんかけもあり、もずくも美味。
 小西氏は航空料金の関係から、明日にチェックアウトするので、全員の荷物を彼の部屋に移し、最後は島内観光。

 奇岩「ミーフガー」の近くには、潮溜まりのような場所にオタマジャクシがいて驚くが、カエルまで! ここの両生類は海水に強いのか?


 磯際には、タイドプールにもハゼ科やスズメダイ、ユゴイなどが見え「初日はここで釣れば良かった」と思うことしきりだが、それが分かっただけでも儲けものだ。

 ユリやアザミが咲き乱れるが、何故かウェーダーが放置!?


 
次は「熱帯魚の家」という、餌付けされているタイドプールへ行くが、まずは小河川を見ると、幅
1mもないのに手長エビだらけ! いることは知っていたが、こんなに多いのか!
 果ては50cmほどのオオウナギまで! マジ、捕まえて飼いたくなった……。
 海水魚の方は、カエルウオかヨダレカケのような魚が、タイドプールを往復するのに驚いたが、ルリスズメやオヤビッチャなどが撒かれたパンに群がる。
 少し先へ行くと、フエダイ類も見えた。
 後は島のスーパーでお土産を買い込み、初日から注目していた「GW限定、食べ放題」のホテルレストランへ行き、島の釣具店を見たところで時間切れ。
 急いで私だけ荷物を発送し、何とか久米商船に間に合う。小西氏とはここでお別れだ。



 
 帰りは渡名喜島には寄らないので少し早いが、快晴の中で見る久米島、スーガマ、慶良間、いずれも美しい。船便は時間を食うが、島の魅力を味わうことができる。

(前夜「帰港してすぐ帰るなんて無理だ」と、仲間と話し合ったばかり)
 船でもけっこう休み、那覇・泊港に着くと、急ぎの野口氏とはここでお別れだが、後は3人でお土産をまた探し、沖縄名物のA&Wを満喫し、沖縄を後にしたのだった。
 仲間たち、スカイマーク、久米商船、ホテルガーデンヒルズ、くに丸、その他の皆様に感謝。



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